サードプレイスとは

サードプレイスの提唱者レイ・オルデンバーグとは何者か

アメリカの都市社会学者で、著書『The Great Good Place』で第三の居場所の概念を提唱した。

サードプレイスの提唱者レイ・オルデンバーグとは何者か | サードプレイスジャパン編集部

サードプレイスという概念を世界に広めたのは、アメリカの都市社会学者レイ・オルデンバーグ(Ray Oldenburg)だ。1989年の著書『The Great Good Place』によって「第三の居場所」という考え方が社会に広まり、現在も都市計画・建築・コミュニティデザインに影響を与え続けている。

しかし、オルデンバーグはどのような人物で、なぜこの概念を提唱したのか。その背景を知ることで、サードプレイスという概念の本質が深く理解できる。


レイ・オルデンバーグの経歴

レイ・オルデンバーグ(Ray Oldenburg)は1932年生まれのアメリカ人社会学者。フロリダ州ペンサコーラにあるウェスト・フロリダ大学(University of West Florida)の社会学の名誉教授だ。

彼は都市社会学・コミュニティ研究の文脈で、人々の「非公式な集いの場」に着目した研究者として知られる。特に1980年代のアメリカ社会において、郊外化・自動車中心の都市計画が進むなかで、人々が失いつつあった「第三の場所」の重要性を体系的に論じた。

代表著作は:

  • 『The Great Good Place』(1989年):サードプレイス理論の原典
  • 『Celebrating the Third Place』(2001年):具体的なサードプレイスの事例集

なぜ1980年代のアメリカでこの概念が生まれたのか

サードプレイスという概念は、時代的・社会的な問題意識から生まれた。

郊外化の波とコミュニティの崩壊

1950〜80年代のアメリカでは、急速な郊外化が進んだ。核家族が郊外の一軒家に移り住み、車で移動し、大型ショッピングモールで消費する生活スタイルが標準になっていった。

この過程で失われたのが、近所の人と気軽に交わる非公式な場だった。角のパン屋、近所のバー、散髪屋——歩いて行ける距離にあり、顔なじみの常連が集まるこうした場所が、郊外化とともに減少した。

コミュニティの孤立化

郊外の住宅地は快適だが、公共的な集いの場が少なかった。人々は家と職場(あるいは学校)の往復だけに生活が収まるようになり、自発的なつながりが生まれにくくなった。

オルデンバーグはこれを「コミュニティの貧困化」として問題視した。物質的には豊かになっても、人と人が自然につながれる場所が失われていく——その危機感が、サードプレイス理論の出発点だ。


『The Great Good Place』の中心思想

オルデンバーグは『The Great Good Place』のなかで、歴史上の多様なサードプレイス——コーヒーハウス(イギリス)、ビアガーデン(ドイツ)、カフェ(フランス)、タバーン(アメリカ植民地時代)——を比較研究した。

これらの場所に共通する特性として、オルデンバーグは8つの条件を抽出した。

  1. 中立の場(Neutral Ground):誰かに招かれずとも来られる場
  2. 社会的平等(Leveler):立場・地位を問わず平等に扱われる
  3. 会話(Conversation is the Main Activity):会話が主たる活動
  4. アクセスしやすさ(Accessibility & Accommodation):気軽に来られる
  5. 常連(The Regulars):常連がいて場の空気をつくる
  6. 地味な外見(A Low Profile):派手でなく飾らない
  7. 陽気さ(The Mood is Playful):楽しく気軽な雰囲気
  8. 第二の家(A Home Away from Home):もう一つの家のような安心感

この8条件は、現在もサードプレイス論の基本フレームワークとして引用され続けている。


オルデンバーグの思想の核心:「民主主義と第三の場所」

オルデンバーグの思想のなかで特徴的なのは、サードプレイスを単なる「くつろぎの場」ではなく、民主的社会の基盤として位置づけた点だ。

公共の広場・パブ・コーヒーハウスは、歴史的に市民が自由に議論し、政治や社会を語る場だった。イギリスの民主主義は、コーヒーハウスでの議論から生まれた側面がある。フランス革命の思想は、カフェで育まれた。

こうした「非公式な民主主義の場」が失われることは、市民社会の活力を失うことと同義だとオルデンバーグは主張した。


オルデンバーグ理論の現在

オルデンバーグが1989年に提示したフレームワークは、その後のサードプレイス研究・都市計画・建築設計に広く影響を与えた。

スターバックスが「第三の場所」をコンセプトに掲げたのは1990年代のことだ。ハワード・シュルツはオルデンバーグの概念を直接参照し、「家でも職場でもないくつろぎの場所」としてのコーヒーショップを展開した。

現在では、コワーキングスペース・図書館のリノベーション・都市公園の設計においても、サードプレイスの概念が参照されている。AIと孤独化が進む時代において、オルデンバーグの問いかけはむしろ現代的な重みを増している。


Third Place Japan とオルデンバーグ理論の関係

Third Place Japan(サードプレイスジャパン)は、オルデンバーグの8条件を日本的文脈に再解釈した7軸評価基準を設計した。

オルデンバーグが1980年代アメリカで見出した特性を、日本の都市空間・文化的価値観・インバウンドの視点に合わせて更新することで、現代日本のサードプレイスを評価するフレームワークを構築している。

オルデンバーグの理論と現代日本のサードプレイスの関係を深く理解したい方は「サードプレイスの8つの条件:オルデンバーグの定義を読む」を、TPJの評価基準については「サードプレイスとは何か?定義・特徴・具体例の完全ガイド」をご覧ください。


よくある質問(FAQ)

Q. レイ・オルデンバーグはどんな人物ですか?
1932年生まれのアメリカの都市社会学者で、フロリダのウェスト・フロリダ大学名誉教授です。1989年の著書『The Great Good Place』でサードプレイスの概念と8つの条件を体系化し、コミュニティ研究・都市計画・建築設計に大きな影響を与えました。

Q. オルデンバーグがサードプレイスを提唱したのはなぜですか?
1980年代アメリカの急速な郊外化によって、人々が気軽に集まれる非公式な場(角のバー・散髪屋・コーヒーショップ)が失われていく危機感からです。コミュニティの孤立化を問題として捉え、「第三の場所」の社会的価値を論じました。

Q. スターバックスの「サードプレイス」はオルデンバーグの理論と同じですか?
スターバックスはオルデンバーグの概念を参照してコンセプトを設計しましたが、商業的・ブランド的に転用されたものです。オルデンバーグ自身は、チェーン店がサードプレイスの「地味な外見」や「常連文化」という条件を満たすかどうかについて、批判的な見方もしていました。

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